10キロ超えスコティッシュのサンダーとあわてんぼママです
2018年12月26日
フアニとロンガ その5
前回まで
その年の夏の盛り、ギィはイエンスら数人の男親と協力して川の一部をせき止め、子供たちのために浅いプールを造ってやった。
ロンガは重い石を動かすのを手伝った。
完成したプールを前に、意を決したロンガがドボン!と飛び込むと盛大な水飛沫が上がり、子供たちは歓声とともに後に続いた。
ロンガは子供たちが無茶な真似をしないよう見守っていた。
フアニは恐れることなく水に親しんだ。
父親も子供も、休日を存分に楽しみ、腹を空かせて家に帰った。
その季節に村民の食卓にありがちなメニューといえば、水っぽいジャガイモと、かまどの上で焼いた平パン、あとは玉ネギのスープに少量のチーズがせいぜいであろう。
ユェンはロンガのためにパンをひとつ余計に焼いてやった。
秋が深まると、ギィはイエンスやハンとともにキノコ狩りに出かけた。
子供たちも一緒だ。
ごく幼いうちから野草や菌類の見識を高めるのは、非常に大切なことである。
ハンの一番上の娘、スウニは、ドングリを拾うことにした。
ハンの家は主に豚を飼っていたので、餌の足しにするのだ。
スウニはロンガの友人リストの上の方に入っている。
幼い弟妹の世話を良くし、フアニを妹のように可愛がる。
祭りでは民謡のソロパートを務めていた。
ロンガが鼻を利かせると、土や家畜の匂いに混じって、いずれ大輪と咲くユリの花にも似た、生気に満ちた香りが漂って来る。
そこでロンガは、少しだけ鉤爪を使って木に登ることにした。
するすると登って高い枝を揺さぶると、ドングリが雨のように降り注ぎ、ハン一家の籠はどれも一杯になった。
「これなら冬中間に合うわ」スウニは大喜びで、殻を剥いたドングリをロンガに与えた。
これは大変口に合ったので、ロンガはもう少し欲しいという仕草をした。
すると子供たちが競って木の実を食べさせたので、ロンガは腹一杯の度が過ぎて歩くのも苦しく、帰り道は手押し車に乗せてもらう羽目になった。
「そろそろ断るってことも覚えた方が良いぞ」
ギィがそう言ってからかうと、大人たちが笑い、子供たちはしょげ返った。
スウニは『秋に旅立つ人』という、この土地に伝わるもの悲しく長い歌を美しい声で歌った。
知っているフレーズになると、子供たちも和した。
その歌声は、今でもロンガの耳に残っている。
ギィは冬の間も時々狩りに出た。
誰も誘わず、たった一人で森へ行く。
そんな時のギィは口数が減り、あの不思議な匂いが強まる。
フアニやユェンと一緒に戸口に立って、森へ向かうギィの後姿を見送りながら、ロンガはそう感じていた。
ロンガはパトロールを欠かさなかった。
最も離れた農家さえ御座なりにせず、定期的に巡回した。
夕暮れ迫る丘を、冬枯れの草地を、白い影が走り抜ける。
それは村人が野良仕事を締めくくり、家畜小屋の戸締りをする合図となった。
ハーネスと引き綱は、もはや装飾品と化してギィの家の戸口にぶら下がっていた。
この村の羊は古い品種だから、毛は春になると自然に抜け落ちる。
フアニとロンガは、ユェンの手伝いをして大きな籠に羊毛を梳き集めた。
時にはシャオがやって来て、この作業に加わった。
仕事を終えるか飽きるかすると、子供たちはロンガを連れて野原でキイチゴを摘んだ。
たくさん採って帰ると、ユェンが甘いジャムを作ってくれた。
ロンガがギィの家に来てから二度目の夏至も、無事に過ぎた。
「もう野獣は現れないのではないか?」そう考える村人も何人かいた。
「すでに絶滅したのか、そうでなければギィのとこのロンガのようにおとなしくなってしまって、森の向こうで木の実でも食べてほそぼそと暮らしているとか」
「何とも言えないな」
ギィは答えた。オオカミどもと対峙したロンガの姿が脳裏をよぎった。
「早計は禁物だ。用心に越したことはないよ」
ハンはそう言って不用心を戒めた。
村の暮らしは楽しいことばかり、というわけにはいかない。
それでも人々は互いの不足を補い合って暮らしを立てた。
つまらない諍いは、知恵ある者が間に立って笑い話に変えた。
なんと言ってもこの村は、一つの大きな家族なのだから。
こうして季節は巡り、再び夏至が近づいた。
祭りの段取りを立てる集まりで、スウニは言った。
「今年はダンスの曲を妹のフレイに任せたいと思うんだけど、構わないかしら」
スウニは音楽担当の若者を代表していた。
皆は怪訝な顔をした。おやおや、スウニが歌姫の座を明け渡すとはいかなる事情か。
「わたしの声は結局、民謡向きなのよ。
フレイの方が良く通る明るい声をしているから、大勢で踊る場を盛り上げてくれる筈よ。
その間、わたしは子供たちを預かろうと思っているの。
数名の有志を募って、子守りグループを作るわ。
そうすれば乳幼児を持つ親御さんたちだって安心してダンスに参加できるでしょう?
せっかくのお祭りなのに若いカップルが何組もダンスの前に帰ってしまうのは、残念なことだわ。
わたしたち、音楽だけじゃなく何か役に立つことをしたいの」
なるほど、それは名案だ。大人たちは賛成した。
踊り手が増えれば賑わいも増す。
誰もが祭りの日を楽しく過ごせることだろう。
「若い娘というのは、新しいことを考えるものだねえ」
年寄りは感心して言った。
「私らもあんたの『託児所』を手伝わせてもらうよ。この年になると、二三曲踊れば十分だからね」
「子供のお菓子は多めに用意した方が良さそうだね」
会議がまとまると、一同は今年もまた無事に『夏至の祭り』を迎えられるよう、手を重ね合って祈った。
次回へ続く
その年の夏の盛り、ギィはイエンスら数人の男親と協力して川の一部をせき止め、子供たちのために浅いプールを造ってやった。
ロンガは重い石を動かすのを手伝った。
完成したプールを前に、意を決したロンガがドボン!と飛び込むと盛大な水飛沫が上がり、子供たちは歓声とともに後に続いた。
ロンガは子供たちが無茶な真似をしないよう見守っていた。
フアニは恐れることなく水に親しんだ。
父親も子供も、休日を存分に楽しみ、腹を空かせて家に帰った。
その季節に村民の食卓にありがちなメニューといえば、水っぽいジャガイモと、かまどの上で焼いた平パン、あとは玉ネギのスープに少量のチーズがせいぜいであろう。
ユェンはロンガのためにパンをひとつ余計に焼いてやった。
秋が深まると、ギィはイエンスやハンとともにキノコ狩りに出かけた。
子供たちも一緒だ。
ごく幼いうちから野草や菌類の見識を高めるのは、非常に大切なことである。
ハンの一番上の娘、スウニは、ドングリを拾うことにした。
ハンの家は主に豚を飼っていたので、餌の足しにするのだ。
スウニはロンガの友人リストの上の方に入っている。
幼い弟妹の世話を良くし、フアニを妹のように可愛がる。
祭りでは民謡のソロパートを務めていた。
ロンガが鼻を利かせると、土や家畜の匂いに混じって、いずれ大輪と咲くユリの花にも似た、生気に満ちた香りが漂って来る。
そこでロンガは、少しだけ鉤爪を使って木に登ることにした。
するすると登って高い枝を揺さぶると、ドングリが雨のように降り注ぎ、ハン一家の籠はどれも一杯になった。
「これなら冬中間に合うわ」スウニは大喜びで、殻を剥いたドングリをロンガに与えた。
これは大変口に合ったので、ロンガはもう少し欲しいという仕草をした。
すると子供たちが競って木の実を食べさせたので、ロンガは腹一杯の度が過ぎて歩くのも苦しく、帰り道は手押し車に乗せてもらう羽目になった。
「そろそろ断るってことも覚えた方が良いぞ」
ギィがそう言ってからかうと、大人たちが笑い、子供たちはしょげ返った。
スウニは『秋に旅立つ人』という、この土地に伝わるもの悲しく長い歌を美しい声で歌った。
知っているフレーズになると、子供たちも和した。
その歌声は、今でもロンガの耳に残っている。
ギィは冬の間も時々狩りに出た。
誰も誘わず、たった一人で森へ行く。
そんな時のギィは口数が減り、あの不思議な匂いが強まる。
フアニやユェンと一緒に戸口に立って、森へ向かうギィの後姿を見送りながら、ロンガはそう感じていた。
ロンガはパトロールを欠かさなかった。
最も離れた農家さえ御座なりにせず、定期的に巡回した。
夕暮れ迫る丘を、冬枯れの草地を、白い影が走り抜ける。
それは村人が野良仕事を締めくくり、家畜小屋の戸締りをする合図となった。
ハーネスと引き綱は、もはや装飾品と化してギィの家の戸口にぶら下がっていた。
この村の羊は古い品種だから、毛は春になると自然に抜け落ちる。
フアニとロンガは、ユェンの手伝いをして大きな籠に羊毛を梳き集めた。
時にはシャオがやって来て、この作業に加わった。
仕事を終えるか飽きるかすると、子供たちはロンガを連れて野原でキイチゴを摘んだ。
たくさん採って帰ると、ユェンが甘いジャムを作ってくれた。
ロンガがギィの家に来てから二度目の夏至も、無事に過ぎた。
「もう野獣は現れないのではないか?」そう考える村人も何人かいた。
「すでに絶滅したのか、そうでなければギィのとこのロンガのようにおとなしくなってしまって、森の向こうで木の実でも食べてほそぼそと暮らしているとか」
「何とも言えないな」
ギィは答えた。オオカミどもと対峙したロンガの姿が脳裏をよぎった。
「早計は禁物だ。用心に越したことはないよ」
ハンはそう言って不用心を戒めた。
村の暮らしは楽しいことばかり、というわけにはいかない。
それでも人々は互いの不足を補い合って暮らしを立てた。
つまらない諍いは、知恵ある者が間に立って笑い話に変えた。
なんと言ってもこの村は、一つの大きな家族なのだから。
こうして季節は巡り、再び夏至が近づいた。
祭りの段取りを立てる集まりで、スウニは言った。
「今年はダンスの曲を妹のフレイに任せたいと思うんだけど、構わないかしら」
スウニは音楽担当の若者を代表していた。
皆は怪訝な顔をした。おやおや、スウニが歌姫の座を明け渡すとはいかなる事情か。
「わたしの声は結局、民謡向きなのよ。
フレイの方が良く通る明るい声をしているから、大勢で踊る場を盛り上げてくれる筈よ。
その間、わたしは子供たちを預かろうと思っているの。
数名の有志を募って、子守りグループを作るわ。
そうすれば乳幼児を持つ親御さんたちだって安心してダンスに参加できるでしょう?
せっかくのお祭りなのに若いカップルが何組もダンスの前に帰ってしまうのは、残念なことだわ。
わたしたち、音楽だけじゃなく何か役に立つことをしたいの」
なるほど、それは名案だ。大人たちは賛成した。
踊り手が増えれば賑わいも増す。
誰もが祭りの日を楽しく過ごせることだろう。
「若い娘というのは、新しいことを考えるものだねえ」
年寄りは感心して言った。
「私らもあんたの『託児所』を手伝わせてもらうよ。この年になると、二三曲踊れば十分だからね」
「子供のお菓子は多めに用意した方が良さそうだね」
会議がまとまると、一同は今年もまた無事に『夏至の祭り』を迎えられるよう、手を重ね合って祈った。
次回へ続く
・・・も~
pcがストライキを起こしたんだか何だか
セキュリティがどうとか、クラッシュしてるとか言って
画面が動かなくなったので
悩んだ挙句
強制終了してやった!
猫トイレを掃除してから再び立ち上げたら
何事もなくページが開いた~

ざま~みろ! という気分です

それでは皆さん おやすみなさい (´艸`*)
Posted by サンダーのママ at 00:44│Comments(0)
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